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我が子を一流アスリートに
育てるには?(前半)

フェンシング松山恭助選手の母、
松山幸子さんが、
アスリートの親世代に送るメッセージ。

取材・文/上坂美穂  撮影/岡本寿  協力/早稲田大学

ちゃんと子供を育てていけるのだろうか?
しつけってどうしたらいいんだろう?
毎日のご飯これでいいんだろうか?
子どものことになると、悩みは尽きませんね。
そんな悩める親たちに送る人生の先輩ママからの応 援メッセージです。
キーワードは「スポーツ」を通した子育て。
親が子どもにサポートしてやれることは?
子育てで親も鍛えられ自分の人生を楽しむことができ ます。

わが家は2人兄弟で、兄の大助が小学1年生、恭助が幼稚園年中のときにフェンシングを始めました。
きっかけは小学校で配られ たスポーツ少年団のリストにフェンシングがあったから。
家系に はスポーツ好きも特におらず、私自身は美大出身で、汗をかいたりすることもあまり好きではないようなタイプ。
でもフェンシングならちょっと珍しいし、きれいなイメージだし、体動かすのもいいかな、という理由で、週一回、土曜日の夕方に教室に通うことに。
偶然のフェンシングとの出会いでした。
当時ふたりは体操教室と空手にも通っていました。
3つの習い事をどう整理するか親としても考え、空手などはお金もかからないし、お友達も多かったので空手だけにしたら? と何度か言ったのですが、子どもたちはもう、フェンシングが大好きになっていて、 フェンシングをやるって言いはるので、仕方ないなあって、そのうちやめてくれるかな? と見守っていたのですが・・・。
ですから、すごい選手にしようと思って始めたわけではないのです。
今や恭助は東京オリンピックを控えた選手になりました。
しかし当初はこんな風になるとは思ってもみませんでした。
私自身も子どもに引っ張られ、さまざまなことを学んできたと思います。

子どもにはそれぞれ個性があり、勉強はできるけどスポーツはできない子、スポーツはできるけど勉強はイマイチな子、お裁縫ができる子、けん玉が得意な子、それぞれ得意なことがあると思います。
得意なことを見つけたら応援してやる。
それが偶然の出会いを必然に変えるコツなのではないでしょうか。
わが家の場合はたまたまフェンシングで、好きなことを早いうちに見つけられた。
それが一番幸せなことだったと思います。

あれもこれもやらせたい、と思う方も多いでしょう。
でも子供はそんなにいくつもできないんですよ。
親にしてみたらスポーツも音楽も勉強もやらせてみたいのはわかります。
最初はそれもいいのですが、全部を同時に続けるのは無理なのです。
確かに、ひとつの ことに絞るのは、ある程度は賭けですよね。
でも賭けないと何も 生まれないし。
自分の子どもを見ていたら向き不向きはわかりま せんか? 
親自身も自分に向き合って、自分の向き不向きを考えたらいいと思うんです。
だって自分が産んだ子供だから自分に似ているわけですよね(笑)?

実は、中学受験の塾にも小3から通わせていたのですが、フェンシングをやりたい、と子どもたちの意識がはっきりすると、「これは 神様がくれたチャンスだ、フェンシングをやりたいなら、やらせるしかない!」 と、覚悟を決め、一番便利な近所の公立中学校に進学させることにしました。
フェンシングをやると決めたんだから、余計なことで疲れされてはいけない、だから練習に行くのに一歩でも近いほうがいいと思ったのです。
余計なことを排除してこそ、結果がでる。
だからやることを取捨選択することが大切。
その勇気がなかなか持てない方も多いのではないかと思います。
皆が中学受験をするから、と周囲と同じことをしなればと思うこ ともあるかもしれません。
でも家庭の事情も、子どもの個性も一 人ひとり違うのですから、決めるのはやはり自分自身、子どもたち自身です。

アスリートを目指す子どもに限りませんが、子どもにとっては、親の存在はとても大切です。
親がサポートしてくれる安心感があると、子どもは競技に思う存分取り組める。
もし、失敗しても親が支えてくれる。
その絶対的な安心感がないと、子どもは不安な時は不安だと言えないし、ダメだった時も弱音をはけないのです。
その安心感の元は、実はとても簡単なことです。
小さい時にとにかくたくさん抱きしめてあげること。
言葉はいらないです。
お金もいらない、いい環境もいらない。
ただ抱きしめてあげる。
そうすると愛されているんだなと肌でわかる。
お母さんでなくてもお父さんでもおばあちゃんでも誰でもいいんですよ。
生活を共にしている人であれば。
自分は愛されているんだ、大切にされていると刷り込まれるから。
そうすると自分自身のことも大事に考えて、自分の周囲にいる人もリスペクトする。
それが子どもを伸ばすときに一番大事なことだと思う。
お金をかけるのは、そのあと。 ずいぶん後でいい。
少なくとも中学の間までは、お金がないとか環境が整っていないとかくよくよすることはない、ただ、抱きしめて「人生をよりよく生きてほしいんだよ、あなたに」って。
そうしたら子供はがんばる。

もう大きくなっちゃったから抱きしめるのは手遅れ? と思う方には、遅いということはないですよ、と言いたいですね。
勝手に親のほうで(もう手遅れだ、大きくなっちゃったから)というけれど、そんなこと全然ないんですよ。
私たちだっていい大人だけれど、やっぱり不安な時に誰かに ぎゅーっと抱きしめられたら、それだけで安心しませんか? 
言葉で何か言われるより、勇気百倍だと思うんですよ。
うちはもう2人とも大きくなりましたが、「隙あり!」といってたまに抱き着いたりしますよ(笑)