Lifestyle

子育て・シニア世代のリフォーム

リフォーム実績とデザイン賞受賞多数の
建築家 青木律典さんが、
住まいのお悩みにお答えします。

撮影/石田 篤

c .c .caféが最近特に注目しているのが、ライフスタイルの変化に伴うリフォームの関連性です。
空間deアンサーでは、その中でもお悩みが多いテーマに絞って、建築家の青木律典さんに聞いていきます。

>第1回 収納に関するお悩みはこちら

2013年にリノベーションした青木さんのご自宅の椅子。
子どもの成長に合わせて長く使える椅子(左)。
奥様が独身時代から使っているYチェア(右)は座面を張り替えて使用している。

―タカギのお客様の中には、子育てが忙しいご家庭も多いですが、そんな世代からの典型的な相談はどんなものですか?

青木さん
子育て世代からのご相談で必ずあがるのは、家事を時短したい! という声です。
子育てに加えて、家事、仕事に追われる生活は、僕も経験してますから、その切実な気持ちはよくわかります。
この問題のカギは家の中の生活導線です。
家事をする導線を短く設計する、家事スペースをまとめる、2方向から部屋に出入りできようにするなどをまず提案します。

―なるほど。炊事や家事のスペースをまとめるとは、どういうことでしょうか?

青木さん
例えば、毎日洗濯で行う一連の動作をする空間をまとめます。
移動せずにできるよう、洗濯機のスペース、室内にちょっと干すスペース、アイロンかけをするスペース、しまうスペースを集中させると、あちこち移動しなくていいですよね。
これだけまとめると家事の負担のかなりの軽減になります。

―確かにそれは嬉しい発想ですね。では家事の負担が集中しがちなキッチンはどうでしょうか?

青木さん
子育て世代のキッチンはとにかくモノが多くなりがち。家族人数が増えれば、食器も食材も増えるでしょうし、水筒や弁当箱といった毎日登場するアイテムも増えてくる、時短するものとしてのモノを買うこともあり、来客用のものも増えてくる。
収納するものも、食器から食材、調味料、調理器具と様々ですね。
そこでまずは、毎日のご家庭での炊事や食事、調理の傾向を伺います。
そこで、収納計画をする前に物の数や要不要を見直すのと同じように、使っていない食器を処分したり、食生活や買い物スタイルを意識したりすることも大切です。
次に、キッチンには実は配線計画が大事だと思っています。

タカギをご利用いただいている塚原様の綺麗に整理されたキッチン。3年半前に築20年の家をリフォーム。
お悩みはエスプレッソマシンを買いたいけど、置き場がないこと。(塚原様ご提供写真)

―配線計画ってなんですか?

青木さん
端的に言えば、コンセントの位置をどこにするか? ということです。
キッチンには冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、トースター、コーヒーメーカー、フードプロセッサーなどいろいろな家電があります。
それらをどの場所で使うか、収納する場所も決めておかないと、 使用するときにいちいち場所を移動させる、もしくは台の上に出しっぱなしで片付かない。
タコ足配線になって大変になることもあるでしょう。
あらかじめ使用する場所を想定しておかないと、家電の整理が雑然とする。
これでは折角キレイにリフォームしたのに片付かなくて、後悔しかねない。 設計するときは、その辺はかなり話し合いをしてチェックしていま すね。

―なるほど。ほかにモノが多くて、気を付けたほうがいい場所は どこですか?

青木さん
玄関や洗面所でしょうか。
玄関にはいろんなものが集まっています。
靴やカサ、鍵、宅配ボックスや子どもの外遊びの用具やスポーツ 用具もここに集中しますね。
飾り物や置物を置いたりすると…足 の踏み場もないことに。
また、洗面所はお風呂の入り口でもあるわけですが、洗顔や身支度、メイクをする人もいるし、洗濯物もここに集まってくる。
多くの機能を兼ねるスペースはどうしても多種多様なものが集まってくるので、ここでも、収納・配線をあらかじめ想定して計画する必要がありますね。

―では、タカギのお客様の中でも、もうひとつの多数派がシニア世代です。
子どもが大学や就職で独立。新婚以来の夫婦二人住まいに戻ったのでリフォームを考えるケースはよく聞きます。

青木さん
お子さんの部屋を使わなくなったから、その分広くリビングを取り たいという要望は、よく受けますね。
ホームパーティを開きたいので、リビングダイニングを開放的にしたいとか…。
また最近は、元お子さん部屋を、奥様のアトリエ、ご主人のコレクションルームなど、ご夫婦それぞれの趣味の部屋に転用したいというケースも少なくありません。

―シニア世代だと、健康や老後を見据えての相談もあるのでは?

青木さん
段差をなくしてフラットな床にする。
水回りの天板の高さを低めにするといった対策の必要性は、初期段階で確認します。
最近は、ネットを使う方が増えてきたこともあり、疲れ目対策として、照明を意識される方も出てきました。
白熱灯の温かい光はリビングのくつろぎの雰囲気にはとてもいい のですが、字が読みづらい。
その場合は、LEDの昼白色にすることもあります。
シニア生活には大切な視点です。

―シニアになると、キッチンへのニーズも変わってくる印象はあり ますか?

青木さん
好きな友達を呼んで、ホームパーティが開けるような開放的なリビングダイニングキッチンにしたい、もしくはそういう生活スタイ ルを友人宅で見て、そんな生活を取り入れたいという方は増えましたね。
こうした方は、キッチンを生活の主な場所にすることで、夫婦だけでなく来客を想定した「社交」の場として意識した空間にデザイ ンする。
一方で、調理が好きではないから、できれば時間をかけたくない、 夫と二人なので最低限の料理時間でいいという方もいらっしゃいます。
その場合は、前者と同じ開放的なキッチンでも、動線が短くて済むようコンパクトなキッチンスペースを意識する。
目線の先に窓やテレビなどが来るように、料理の苦痛さを和らげるような気分を癒す提案、また食事スタイルも作り付けカウンターでの食事スタイルを基本に、すぐ片付けられるような提案をしたりします。

from c.c.cafe

どうして青木さん?

青木さんは、人気雑誌のリフォーム特集でもよく紹介される東京に事務所を構える建築家。
二子玉川の某人気家電屋さんでセミナーをされるなど、その評判は折り紙つき。
実は、c.c.caféの制作スタッフの中にも、青木さんに家のリフォー ムを依頼した経験者がいます。
実際にお願いしてみたから分かるのは仕上がりはもちろん、顧客の目線に立って、生活課題を空間で解決しようとする物腰の柔らかさは、噂通りの方でした。

『デザイン性が高いから、生活に不便は仕方がない。というのは、 デザイナーの言い訳に過ぎないと思います』。
取材の後の一言には、建築家としてのプロ意識と同時に生活目線を大切されているんだなあと再認識しました。
そんな青木さんのリフォームやリノベーションをぜひお楽しみください。

青木律典さん

あおき のりふみ

建築家。LIXIL デザインコンテスト審査員特別賞、JID AWARD2014 インテリアスペース部門賞ほか受賞多数。
http://www.designlifestudio.jp/