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我が子を一流アスリートに
育てるには?(後半)

フェンシング松山恭助選手の母、
松山幸子さんが、
アスリートの親世代に送るメッセージ。

取材・文/上坂美穂  撮影/岡本寿  協力/早稲田大学

「勝負の世界に生きている息子たちを見てきて思うのは、勝つか負けるしかないんですよね。間はない。そのために親はなにができるかということです」
フェンシング男子フルーレナショナルチームのキャプテン、松山恭助さんの母に「アスリートの母」として子どもをサポートしていくときの親の心境と心構えを語っていただきました。

まず、人に何か言われても気にしないこと。
自分が悪者になって いても気にしないことです。
子どもが人より目立つことをさせるのだから、風当たりも当然あるので、誰かが盾になってそれを受け なくてはいけない。
親にその覚悟がないのに、子どもを目立たせようというのは都合がよすぎますよね。
他人の子どもがうまくいったらうらやましいという気持ちは人間にはあるという前提を理解しておいたほうがいいです。
「自分は一生懸命やっているんだから悪口を言われるのはおかしい」とか、「一生懸命やっているのだから妬んだりされないはず」と思うのは間違いで、それぐらい一芸に秀でさせるっていうのは厳しいことなの。覚悟しないと。
でも、もちろんそう言うわたしだってしょげたことあるし、失敗もいっぱいしています。
そういうことがあって、だんだん強くなるんですよね。

2018年アジア競技大会のフェンシング男子フルーレ団体で3位を獲得した時のメダル

また、親が一生懸命子どもをサポートしているからといって、子どもが必ずしも口に出して感謝をしてくれるかというとそんなことはないのです。
大きくなってくると批判的なことも言われます。
「ママはやりすぎ」 とか。
あるとき、たまたま兄弟ふたりとも、それぞれ私を批判したことが あったので、ちょっとしょげてしまい、「私、全然悪いことしていないのに、子どもたちは感謝の気持ちもないよね」って夫に言ったことがありました。
そうしたら夫は「男がそんなこと(ママありがとう、とか感謝の気持ちを)言ったら気持ち悪いぞ」って(笑)。
確かにそんなことを言ってもらいたいからしているわけではない んですよね。
夫は「いろいろあっても家にご飯食べに帰って来る、そういう行動で見ろよ、いやだったら帰ってこないんだから、ちゃんと家に夜でご飯を食べるってことは家がいいってことなんだから、それで良しとしろよ」って説教されました(笑)

才能はどの子にもあるの。それは何度でも強調して言いたいことです。
どの子どもにもある。でもそれを見つけられるかどうかがポイントなんですよ。
できるだけ早く見つけられれば幸せです。
でも、せっかく才能を見つけても「それが将来何の足しになるんだろう?」という思いがあると育てられない。
そういう例が多いのではないでしょうか。
たとえば、昆虫採集や、 アニメのコスプレだって才能ですよね。
でも「コスプレなんてみっともない」「そんなことできたところで何 になるの?」と、言いがちですよね。

実はフェンシングを始めたときも「フェンシングなんて何になるの? なんでそんなことやってるの?」ってさんざん言われまし た。
確かにその時は自分もそう思うこともあったけれど、でも子どもたちがキラキラしているし、せっかく見つけた才能なんだから、という気持ちで今日までやってきました。
子どもたちも、私も道を切り開いてきたと思っています。
だから人と比べることはないんです。
「うちの子には将来モノになるような才能なんてない」という人にもひとこと言いたいですね。
親が子供をちゃんと見ているかどうかにそれはかかってくると思 うんです。
だれとでも話せるとか、整頓がすきとか、そういう才能だって、才能です。
片付けのこんまりさんの仕事だって、以前はそんな職業はなかった。
あれはあの人が作ったんですよね。
子どもが好きなことを見つけてそれに価値を付けていくことが、 才能を活かすことになります。

家での食事にはそんなに神経質になる必要はないと思っています。
私は料理が得意でもないし、おおざっぱな性格なので、ひとつだけ気を付けているのは主菜に肉と魚を交互に出すことです。
あとカルシウムを摂ること。
野菜は味噌汁や付け合わせ、刻んでお料理の中にいれることで、 量を摂取することを心がけています。
凝った料理はあまり作りません。
素材を選んで、シンプルな料理で新鮮な、旬のものを食べさせる。
食卓は茶色っぽい感じでしょうか。
男の子はそういう茶色系の食事が好きですよね。
凝ったソースよりなんでもしょうゆをかけるのが美味い、とか(笑)。
でも、料理は大したことないんですが、食器やテーブルセッティングが好きなので、うちの子どもたちは料理そのものより、外で食事をしていると、そちらのほうに気が付くことが多いようです。
食卓を明るくしていると明るい家になります。
花を飾るのもいいですよね。
食卓が明るくて、きれいだと人が集まってくるのです。
家じゅうをきれいにしておくのは大変ですが、食卓だけきれいにしておこうというのなら、きっとできますから。
とはいえ、家でも、身だしなみでも、きれいにしておくというのはなかなか大変だし、面倒くさいこともありますよね。
そんなときにいつも思い出すのが、子育ての手のかかるときに公園であった見知らぬおばあさんに言われた言葉です。
「 いつもきれいにしていなさい、お母さんがきれいにしていると 男の子は上品なお嫁さんを連れてくるから」って言われたの。
衝撃的でしょ? だから疲れて心が折れそうになった時はその言葉を思い出すの(笑)