廃刊の危機を乗り越えた人気雑誌「天然生活」小さな暮らしの伝え方|2020年2月7日 中川政七商店 大日本市レポート 日本の暮らしを考える②

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廃刊の危機を乗り越えた人気雑誌「天然生活」小さな暮らしの伝え方|2020年2月7日 中川政七商店 大日本市レポート 日本の暮らしを考える②

廃刊の危機を乗り越えた
人気雑誌小さな暮らしの伝え方

文/上原千都世

中川政七商店 大日本市の入り口の写真

日本全国の工芸ブランドが集まる合同展示会「大日本市」にお邪魔したタカギ編集部。浄水とはきってもきれない関係のキッチンツールや、暮らしを豊かにしてくれる生活雑貨があふれる空間の中で、工芸品のもつ力、日本のものづくりのパワーを感じました。

50以上のブランド、作り手とバイヤーさんたちの熱気に包まれた「大日本市」の様子をレポートした前回に続き、今回は最終日に会場で行われた「天然生活」の編集長、八幡眞梨子さんのトークイベントをお届けします。
→前回の内容はこちら

「小さなこだわりを大切にする暮らし」をベースにした記事が評判を呼び、多くの読者から支持される「天然生活」。廃刊の危機を経て復刊、出版不況といわれる中、復活記念号が異例の重版増刷を重ねた「天然生活」が、雑誌づくりを続けるうえで大切にしているものとは?
 「丁寧な暮らしの伝え方。復刊のお話とともに。」と題し、“ファンを魅了する雑誌づくり”の秘密に迫ります。

天然生活の八幡編集長トークイベントの写真①

ライフスタイル誌の先駆けだった
「天然生活」
雑誌の売れない時代に重版を重ね
大きな話題に

2003年に誕生した雑誌「天然生活」は、創刊当初から「小さなこだわりを大切にする暮らし」をテーマに、シンプルで丁寧な暮らしを提案してきました。女性ファッション誌全盛の当時、「暮らしを楽しむ」、いわゆる“モノよりコト”を提案する雑誌はあまりなく、「天然生活」はライフスタイル誌の草分け的存在として、着実にファンを増やしていきました。

ところが昨年2019年2月に版元が倒産。一時は休刊を余儀なくされ、あわや廃刊の危機に陥りますが、扶桑社から復刊を果たします。8月の復刊号に先駆けインスタグラムやツイッターなどSNSを再開、復刊を知った愛読者からの予約が殺到、なんと発売前に重版(売れ行き好評につき、追加で印刷、販売すること)が決定。異例の5刷りを記録し、業界紙でもこのニュースは大きく取り上げられ、話題となりました。

八幡編集長「一番嬉しかったのは、何より読者のみなさまからの喜びの声ですね。復刊が決まって、お便りを2000通以上もいただきました。休刊のときも、お便りだけでなく「(月刊で難しいなら)年三回でもいいから発行してほしい」「紙を薄くしてもいいから続けてほしい」といった、お電話をたくさんいただきました。約5000人の定期購読者の皆さま全員に休刊のお知らせをしたのですが、ほとんどの方が「次(復刊)を待ってます」と解約せず、そのまま継続してくださいました。カメラマンさん、ライターさん、料理家さんなど、お世話になった皆さま、また全国の書店さんからもお祝いの言葉をたくさんいただきました。書店員さんと読者さんが手を取り合って喜んでいたというエピソードも聞き、本当にありがたいなあと感じています」

雑誌や本が売れない、出版不況といわれるこの時代、消えていく雑誌も少なくありません。「天然生活」はなぜ復刊できたのでしょうか?ここまで読者の心をつかんでいるのでしょうか?

天然生活の八幡編集長トークイベントの写真②

ファン層を絞らない、
マーケティングをしない
常識にとらわれない雑誌づくり

「天然生活」では、雑誌を作る上で以下の3つのことを大事にしてい ます。

「天然生活」が大事にしていること

❶料理を作ったり、服を作ったり、壊れた服を直したり、自分の手を動かしながら無理をせず暮らしを楽しむこと

❷自分らしく、おしゃれに自然体に日常を楽しむ方法を提案すること

❸暮らしを整えることから、家庭や社会を、できるだけ平和に居心地の良いものにすること

この3点から軸がぶれることなく、「天然生活」独自の世界観を作ることに注力してきたことが、読者に愛された理由だと八幡編集長は言います。

八幡編集長「「天然生活」の読者は20代~90代まで幅広い年齢の読者がいらっしゃいます。雑誌はマーケティングして、20代向け、30代向け、とかターゲットを決めて本づくりを始めます。でも年代で分けるマーケティングはせず、「世界観を作る」ことに力を注いできました。そしてその世界観に惹かれて、世界観が好きと言ってくださる方が買ってくださった。世界観を確立することだけに軸を置いてぶれずにやってきたことで、共感してくれた読者の心をつかまえることができ、独自のコミュニティが作れていたのではないかなと思います」

季節感を大切に、
価値観を押し付けないのが
ファンを増やす雑誌の秘密

では具体的にはどんな風に誌面づくりをしているのでしょうか。八幡編集長のお話には、雑誌に限らず「よいものを人に伝える」ために大切なヒントがいっぱいありました。

天然生活らしい誌面づくりで
意識していること

・持続可能な社会に貢献できる暮らしを紹介

八幡編集長例えば復刊号では「プラスチックを減らす暮らし」という記事を掲載しました。「持続可能な社会」は、最近話題のテーマですが、頭ごなしに決めつけたような記事を作るのではなく、私たちもできることがないか、という視点で記事を作っています。

・手作りのものを入れる

「天然生活」は、手を動かすことで暮らしを作る、その時間を楽しむのが豊かさではないかという考え方があるので、洋服やお料理など、なるべく手作りできるものを紹介しています。例えば最近で言えば蜜ろうラップ。布に蜜ろうの塊を作って食品ラップのように使って、繰り返し使えます。それを自宅で作ってみませんかという提案をしたらとても反響がありました。

・季節感を大切にする

例えばクリスマスはこんな風に過ごしてみませんか、とか、お正月の飾りはこんなものはどうですか、春になったらこんな料理を作ってみませんか、とか四季に寄り添った企画を誌面に出すようにしています。

ほかにも衣食住のテーマを偏らずバランスよく掲載する、高級品ではなく、ちょっとがんばれば手に入るもの、できることを紹介する、など、ということも心がけている、とのこと。

環境問題など、暮らしにかかわる社会問題についても、価値観を押し付けるのではなく、読者に寄り添うようなものの見方をしていきたい。そんな八幡編集長の言葉から、優しくもぶれない芯をもって雑誌づくりに取り組んでいることがうかがえます。

ネットの情報だけに頼らず、
 直接人と会うことを大切に

もうひとつ、「天然生活」が昔から大事にしていることは「直接人に会う」ことです。ネットで何でも検索できてしまう時代ですが、直接会うことでしか得られないものがあります。

八幡編集長「インスタグラムを活用していますし、情報収集にSNSを使うこともありますが、知人の紹介で会うとか、お店や現地に足を運ぶ、ということを重視して情報を集めるようにしています」

名の知られた方ではなくても、「こんな素敵な人がいる」と聞けば直接会いに行って、ピンときたら紹介する。長野のイタリア料理家、ワインあけびさん、93歳の料理家、桧山タミさん、蓼科のハーブショップオーナー萩尾エリ子さん…「天然生活」に初めて登場したことがきっかけで人気になった方はたくさんいます。世間と関係なく、編集部がいい、と感じたら紹介する。そんな独自の視点が、「天然生活」の世界観を作り、多くの共感を呼び、ファンのこころをとらえて離さないのでしょう。

「小さな暮らし」を
自分なりに楽しんでいってほしい

「天然生活」は、創刊の2003年以来、「シンプルな暮らし」「小さな暮らし」「簡素な暮らし」をテーマに、編集部がいい、と思ったモノ、コト、人を紹介してきました。買って捨てるのではなく、自分で手を動かして作ること、というくらし方を提案してきた「天然生活」ですが、「手を動かす、ていねいに暮らす、暮らさなければ、と負担にならないように、自分なりに楽しんで暮らしていけばいい」と、八幡編集長は言います。

情報にあふれ、めまぐるしくアップデートしていくこの世界で、何が正解なのかわからなくなり不安になってしまうこともあるかと思います。けれど、新商品や流行を追いかけるのではなく、自分がいい、と思った人やコトを紹介し、モノを長く大切にするライフスタイルを一貫して提案してきた「天然生活」制作現場のお話から、周りに惑わされず「自分にとっての心地よい暮らし」について考え、自分なりの豊さや幸せを感じて生活していくことの大切さを改めて実感しました。

浄水を通じて、皆様の大切な暮らしをサポートしてきたタカギですが、新時代にあたり、「どんな生活がこれからの時代に心地よいのだろうか?」と改めて考えいたときに、「小さなこだわりを大切にする」雑誌「天然生活」と出会いました。
暮らしを整えてモノを大切にし、心地よく生活するヒントを「天然生活」から学び、「水を大切にし、お客様と長くお付き合いしていきたい」タカギと「天然生活」が共同で「小さな暮らしを考える」を編集しました。皆様の生活のヒントになれば幸いです。
ぜひご覧ください。

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