天然生活×タカギ 特別編集記事 「小さな暮らしを考える」

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天然生活×タカギ 特別編集記事 「小さな暮らしを考える」

取材・文/前中葉子(BEAM) 撮影/大沼ショージ

みんなで考える小さな暮らし①
「i n - k y o」オーナー・エッセイスト
長谷川ちえ さん

「知っている生産者がつくった食べ物が特別なように、〝顔がわかる人〞の素材や仕事を家の中で感じられるのはやっぱり心持ちが違うんですよね。つくり手のおかげで、豊かな気持ちになれます」

おひつは、秋田・大館の職人さんから買い、20 年近く愛用

おひつは、秋田・大館の職人さんから買い、20 年近く愛用

 2019年の夏、長谷川ちえさんは 、念願の平屋へ引っ越しをしました。
「ずっと物件を探していたのですが、どれも私たちには大きすぎて。ここは珍しくこじんまりした平屋で、庭も夫婦で菜園をやるのにほどよい広さ。自分たちの手に負えるサイズがよかったんです」
味のある建具は生かしつつ、3つに区切られた部屋をつなげ、半分以上がダイニングキッチン、残りが寝室というシンプルな空間です。
「食べると寝るがしっかりできれば十分だよね、と夫と話して。家の中のものすべてに目が届き、見渡せる範囲で生活できる感じがとても心地いいです。そんなふうに、家は箱であれば十分と考える半面、この家に来てから快適に暮らすためには機能も整えないと、とも思うようになりました。どこまで手を加えようか、考え中です」

つくり手を感じて豊かな気持ちに

 台所を見渡すと、使い込まれた味わい深い道具が並んでいます。 長谷川さんが10年以上前から使い続けている鉄瓶、すり鉢、おひ つ、包丁、かござるなど、どれも思い入れのあるものばかり。
「20代後半でひとり暮らしを始め、それまでの雑貨好きから、生活に 根ざした道具や器への憧れが生まれるようになりました。そして『買 うなら長く使えるものを』と考えて選んだものを、いまも使い続けています」
 鉄瓶は30代のとき「鉄瓶を使ってみたいな」と思っていたころに出会ったそう。
「岩手のものですが南部鉄器とは違う地域でつくられている水沢鋳物の鉄瓶です。鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかな味になるといわれ ていますよね。長年、毎日使っているので当たり前になっています が、たしかにそんな気がします。年齢を重ねたいま、ちょっと重いな、 と思うこともあるけれど、おばあちゃんになっても持ち続けていた い、元気でいなくちゃと思うんです」 
 もうひとつ、毎日使い続けているのが、おひつです。
「毎朝玄米を多めに炊き、このおひつに入れて、夜も食べています。 余分な水分が抜けて冷めてもおいしいですし、温め直してもちゃんとおいしいんですよ」
 道具を長く使うためには、それなりのお手入れも必要。でもそれを面倒と思う時間はもったいない、お手入れする時間も楽しみた い、という長谷川さん。
「つくり手がわかっていると、何かあったとき相談できるのもいいとこ ろなんです。修理の相談はもちろん、たとえばおひつが黒ずんできて も『大丈夫だよ、おひつは黒くなっていくものなんだよ』といってもらえるだけで、とても安心できます」
  顔がわかる人の素材や仕事を感じると、心持ちが違う、と長谷川 さんはいいます。
「野菜や器も同じかもしれませんね。だれがつくったのかわかる野菜を、好きな作家の器に盛れば、おいしさも増します。私たちはつくり 手のおかげで、より豊かな気持ちになれるんだな、と最近ますます感じています」

野菜は自宅近くの「えすぺり」で購入。生産者が見える野菜が並び、おすすめの調理法も教えてもらえる

野菜は自宅近くの「えすぺり」で購入。生産者が見える野菜が並び、おすすめの調理法も教えてもらえる

長谷川ちえ はせがわ・ちえ

器と生活道具の店「in-kyo」を営む。今年の春で福島・三春に移住 して4年を迎える。いまは「暇さえあれば家仕事」な日々。

https://in-kyo.net

「天然生活」って
どんな雑誌?

暮らし部門を牽引するメディア。新製品や流行を追いかけるばかりではなく、モノを長く大切にするライ フスタイルを、生活者の視点から紹介。そんな意識に共感する読者やモノづくりの領域から、いち目置かれる人気雑誌にタカギも注目。

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