カヌーが水のF1レースであるわけ カヌー羽根田選手<第2回>|スポーツジャーナリスト生島淳さん アスリートのメンテ力

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カヌーが水のF1レースであるわけ カヌー羽根田選手<第2回>|スポーツジャーナリスト生島淳さん アスリートのメンテ力

取材・文/生島淳  撮影/富貴塚悠太

カヌー/羽根田卓也 選手〈第2回〉
カヌーが水のF1レースであるわけ

羽根田選手は高校を卒業し、カヌーで世界を目指すためにスロバキアに渡りました。以来、ヨーロッパを舞台に大会を転戦していますが、その相棒となるのがカヌー本体。羽根田選手に話を聞いていくと、道具の運搬や、メンテナンスに並々ならぬ苦労があることが分かってきました。

カヌーに乗る羽根田選手の写真

水を読み、コースを読んでカヌーを操るのは豪快さの一方で、繊細なバランス感覚が必要。

カヌーに座る位置は
0.5ミリ単位で決める!

「僕はカヌーとパドルを介して、水を感じるわけです。そういう意味で道具は“相棒”ですよね」
 羽根田選手はそう語ります。しかし、カヌーという乗り物の繊細さは、われわれの想像を超えるものでした。
「試合に向けて、カヌーのセッティングを決めるんですが、これはかなりシビアです。座る位置を決めるのも細心の注意が要求され、1㎜、いや、0.5㎜単位で座る位置を決めていきます」
 なぜ、そこまでの繊細さが必要なのか。カヌーのコースには、大まかにスピードを重視するものと、ターンを重視するものに分かれます。コースの特性を読み、それに合ったセッティングをする能力がトップ選手には求められるのです。
「漕ぎに合ったシート位置を見つけるのが、レース前の重要な仕事ですね」
 羽根田選手の話を聞いていると、モータースポーツのF1の世界を連想してしまうほどです。
 興味深いのは、セッティングを決めるのが選手自身であること。技術系を担当するメカニックと、ドライバーを兼ねているのがカヌーの選手なのです。

日本初のスラロームの施設で練習中の羽根田選手

日本初のスラロームの施設で練習中の羽根田選手。

カヌーは飛行機の移動では
真っ二つに!

 そしてもうひとつ、私が気になっていたのが、海外遠征での移動。カヌー本体は3m50㎝ほどの長さがあります。飛行機で移動するとしたら、とても機内持ち込みできるものではありません。どうやって運搬しているのでしょう?
「ヨーロッパでは、カヌーを積んで車で移動します。EU内であれば移動は自由ですし慣れてしまえば、それほど面倒ではありません。問題は、飛行機です」

インタビュー中の羽根田選手の写真

 大型荷物として預ける? お金を払って?
「違います。カヌーを真っ二つに切るんですよ。そうして搭載してもらうんです。下ろしてからは、カヌーの業者さんに復元してもらうんですが、切ったカヌーは試合では使えませんね。お話してきた通り、繊細さが要求されるので、練習用になってしまうんですよ」
 いやはや、カヌーの世界は深い。
 そんな苦労を重ねながら羽根田選手は競技を続けてきたのです。

第3回へ続く(4月中旬頃更新予定)

スポーツジャーナリスト生島淳の取材後記

from c.c.cafe

どうしてアスリートのメンテ力?

 スポーツに欠かせない水分補給という観点から、読者からご家族のスポーツの話は少なくありません。だからといって、スポーツ番組のようなインタビューではなく、浄水器メーカーならではの視点を考えていたら、道具やカラダのメンテナンスにたどり着きました。

 この連載はスポーツライターの生島淳さんにお願いしています。スポーツ関連のTV番組や雑誌で活躍する生島さんだけに、スポーツファンならご存知の方も多いはず。そんな生島さんですら、スポーツそのものに焦点を当てない取材は、あまりないとのこと。中には、生島さんならではの経験談も登場するようなので、その点もお楽しみに。

生島 淳さん

いくしま じゅん

1967年宮城県生まれ、早大卒。著書に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」、「エディー・ジョーンズとの対話」など。
生島淳さんの写真