「東京最高のレストラン」の 採点者を紹介・横川潤さんの巻|「東京最高のレストラン」 リアルタイム編集日記<第3回>

Lifestyle

「東京最高のレストラン」
リアルタイム編集日記<第3回>

取材・文 山本久美  撮影 冨貴塚悠太

「東京最高のレストラン」の採点者、横川潤さん
東京最高のレストラン2020年度版

こんにちは。
レストランガイド「東京最高のレストラン」編集長・大木淳夫です。第三回目となる今回は、亜細亜大学経営学部ホスピタリティマネジメント学科教授(フードサービスマーケティング)である横川潤さんです。ご実家の乾物屋がファミリーレストラン「すかいらーく」として発展してく様を見て育ち、ニューヨークのレストランガイド「ザガット」を翻訳して日本に初めて紹介したという経歴の持ち主。そんな横川さんの食べ手としての横顔を紹介します。

横川潤さんの写真
横川潤 プロフィール
1962年長野県諏訪市生まれ。1歳半のとき父の起業に伴って上京。開いた乾物屋がファミリーレストラン「すかいらーく」として発展してく様をつぶさに見て育つ。現在は亜細亜大学経営学部ホスピタリティマネジメント学科教授(フードサービスマーケティング)。近著は『絶対またいく料理店101』(集英社インターナショナル)。また、「ザガット」を日本で初めて紹介した人物でもある。

幼少からの高級店巡りに
鍛えられた舌


―横川さんがレストランの世界に入ったきっかけを教えてください。

飲食ビジネスを営む家に育ったことが大きいですね。幼い頃は父の偵察という名の高級店巡りに連れて行かれることが多く、次第に「こういう店に出入りできる大人になりたい」と思うようになりました。

―食にまつわる仕事の魅力を教えてください。

20 代後半のいわゆるバブル期はニューヨークで過ごしたのですが、そこで「ザガット」に影響されて処女作「ニューヨーク万華鏡」を上梓したのがキャリアの原点となりました。飲食ビジネスがあったからこそ留学もでき、仕事も見つけられたその恩返しとでも言うのでしょうか。それが今もなお仕事を続けるモチベーションとなっています。


歴史を重ね、顧客が醸し出す
店のたたずまいを愛する

―レストランに訪れた際にまずどこを見ますか?

私も前回(第2回)の浅妻さんと同じく「匂い」です。それはもちろん嗅覚を主としつつも、料理や器、インテリア、サービス、そして客の醸し出す佇まいも含みます。単純に嗅覚としても、アミューズの匂いで、ほぼその後の展開が予想できます。ヨーロッパの名門ホテルでも足を踏み入れて気づくのは歴史や客が裏打ちする「匂い」ですよね。それは一夜にしてはなしえませんが、生まれ持った個性から滲み出るものでもあり、新店でもそれを感知できると震えるような感動を覚えます。


イタリアンの評論に関しては
責任を感じている!

―好きなレストランのジャンルや得意なジャンルは?

ジャンルに好き嫌いはありませんが、2000 年に「東京イタリアン誘惑50 店」という100点満点でほぼ当時の有名店を網羅したガイドを上梓した以上、特にイタリアンの評論には責任を感じています。また、ニューヨークに足掛け6年住みましたので、アメリカ流ステーキの評論にかけては(日本人相手であれば)負ける気はしません(笑)!


―「東京最高のレストラン2019 年度版」に掲載されている横川さん推しの3 店を教えてください。

横川潤好みのこの3店

  鮨  
さき田
特注の純和室で味わう
吟味しつくされた鮨


たった一人の大工がご主人の細かい要望を聞いて創り上げた純和室は見ていて興趣が尽きない。ご主人の飾らぬ寿司談義も好感が持て、和装の奥様との夫唱婦随も爽やか。そして黒い漆の特注台に置かれる鮨の数々。考え抜かれ、吟味しつくされた品々に、小さい頃から寿司職人になりたかったという彼の半生(魚を知るために築地の仲卸で働いたり、大宴会で一度に何貫握れるか限界に望みたくて、ニューオータニの久兵衛に勤めたり)が垣間見られる。


さき田

東京都三鷹市下連雀1-9-17 K ビル 1F

  日本料理  
銀座室井
銀座にこの店あり。
横川好みの外せない高級店


断酒して以来すっかりご無沙汰をしてしまっているが、「わが偏愛レストラン」といえばどうしても外すことができないお店。酸いも甘いも噛み分けた親方ならではの料理と接客が、うるさ型の客をも黙らせる。銀座の裏通りにあり、敷居が高く感じられるかもしれない。いや、銀座とはそもそもそういう場所である。秋風が吹き始める頃には親方と奥様、弟子達が総出で採ってきた茸が山と盛られるのも風物詩。


銀座室井

東京都中央区銀座8-7-19 すずりゅうビル 2F

  鮨  
銀座鮨 あらい
気持ちよい接客に上質の
つまみと握りが至福


銀座でこれほど構えがきれいで、職人たちの愛想がいい店は稀ではないでしょうか。特にカウンター付き個室が個人的にお気に入り。個室なら寿司屋特有の居心地の悪さはなく、心地よく過ごせて上質のつまみや握りが愛でられ、それは至福の時間をお約束。〆には大トロ、中トロ、赤みを包むダイナミックな太巻きを。


銀座鮨 あらい

東京都中央区銀座8-10-2 ルアンビル B1F


―2019 年11月末発売予定で現在編集作業中の「東京最高のレストラン2020 年度版」刊行が待ち遠しい読者のために、横川さんが通い詰める“私好み”の3店を教えてください。

横川潤が通い詰めるこの3 店

  洋食  
天芝
(赤羽橋)
通い詰めて早20年。
ホテルの天ぷらの名店


実際に自分が通い詰めている、という事実は重いと思います(笑)。東京プリンス時代から20 年近く通っているのが「天芝」。天ぷら店として出色の居心地、ホテルの調達力ゆえの食材を選りすぐりの職人が揚げる天ぷらは飽きることがありません。チーフの遠藤さん、中堅の桜井さん、宮川さんとはもはや親戚みたいな間柄。みなさん、素敵な方々です。


天芝

東京都港区芝公園4-8-1 ザ・プリンス パークタワー東京 B1

  洋食  
銀座 みかわや
(銀座)
洋食、銀座とくれば老舗のこの店。
出色のカキフライを味わう


洋食を食べるならば銀座の老舗がいいですね。木枯らしが吹けばカキフライが恋しくなる、そういうときは「みかわや」へ。冬限定の偏愛店がこちらです。カキフライは大ぶりでフレッシュ感にあふれ、見事な揚がり具合。堂々たるメインディッシュの佇まいです。重厚感あるソースがそそるハヤシライスもぜひ併せて注文してみてください。


銀座 みかわや

東京都中央区銀座4-7-12 銀座三越新館1 階

  フレンチ  
ラ・ブランシュ
(表参道)
両親の結婚60周年もここで祝う

1986 年のオープン直後から通い詰め、今や田代シェフと岡部メートルのコンビは、私にとってレストランとは何か、またそこで働くとはどういうことかを考える上で、ほぼほぼ唯一無二のメルクマールです。そう、継続こそ力なり。過日、両親の結婚60 周年をここで祝いました。デセールに立てられた蝋燭が両親、そして田代シェフと岡部メートルの笑顔を照らしては、あぁ、彼らはもはや親戚のようなものという思いに。私はいつも挑戦的な新メニューを供されますが、ときどきは看板料理の「イワシとじゃがいもの重ね焼き」を食べたいなぁともこっそり思ったりしています。


ラ・ブランシュ

東京都渋谷区渋谷2-3-1 青山ポニーハイム 2F

東京最高のレストラン2020年版②

「東京最高のレストラン2020」(ぴあ刊)
創刊から19年。毎年発行されるレストランガイドの中で、最も歴史がある本です。プロの評論家が実名でレストランを採点し、語るスタイルは健在。いよいよ11月28日に2020年版が発売されます。巻頭を飾る話題の注目店に選ばれたのは、はたしてどのレストラン か? 巻末座談会も必読です。