おいしすぎてひとには食べさせられない「栗の渋皮煮」のレシピ|山脇りこさんの「自家製」ときどき旅レシピ③

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「ひとには食べさせられない、」栗の渋皮煮|山脇りこさんの「自家製」ときどき旅レシピ④

料理家山脇りこさんによる
記憶の中のあの味
記憶の中のあの旅
手づくり& 自家製を大切にする
りこ流レシピです。

レシピ作成・エッセイ/山脇りこ
構成/上坂美穂 イラスト/添田あき
撮影/長谷川潤


山脇りこさんの栗の渋皮煮のバナー

子供のころはスプーンですくって食べるゆで栗や蒸し栗がおやつで、たまーに母がつくってくれる渋皮煮やマロングラッセは特別なものでした。いまならしょっちゅうつくらなかった理由もわかる。ちょっとだけ手間がかかりますが、「食べたい!」という情熱で、つくります。

山脇りこさんの渋皮煮の写真

R e c i p e P o i n t
栗は 9 月中旬から 10 月の終わりごろまでがシーズン。鬼皮に張りとつやがあり、傷や穴がないものを選びます。

材料 〔 つくりやすい分量 〕
2 ㎏
ブランデー ※1 と ½ カップ
黒砂糖(粉末)150g
はちみつ大さじ 3
※ブランデーは高価なものでなくてよい、手近になければ甘めの白ワインでも。

作り方

1.
栗の鬼皮(いちばん外側のかたい皮)をむく。かたすぎるようなら半日ほど水に漬けておくとむきやすい。むいた栗は水にさらす。

栗の皮を包丁でむく写真

2.
 鍋に 1 と完全にかぶる量の水(分量外)を入れて中火にかけ、沸いたら水を捨てる。これを 3 回繰り返す。常に水からゆではじめ、最後はざるに上げる。

栗を煮る写真

3. 
2 の栗が人肌まで冷めたら、目立つ黒い筋を竹串でとる。さらに歯ブラシを優しく当てながら全体の筋をていねいに落とす。ぬるま湯に漬けてそっと洗い、ざるに上げる。

栗の筋を歯ブラシで落とす写真

4.
シロップを作る。鍋にブランデー、黒砂糖、はちみつを入れて中火にかけ、沸いたら火を止めて人肌まで冷ます。

5.
 3 を 4 に入れて 1 時間置く。中火にかけて沸いたら火を弱めて10 分ほど煮て、そのまま冷ます。シロップごと熱湯で洗った保存瓶に入れる。

6.
シロップごと熱湯で洗った保存瓶に入れる。


山脇りこさんの渋皮煮とマロングラッセにまつわるエッセイ

「おいしすぎてひとには食べさせられない」
母がよく栗の季節に言っていた。
昔、母は渋皮煮とマロングラッセを毎年つくって東京にいる私に送っ てくれた。それはそれはおいしかったので、大事に、誰にもあげずに独り占めして食べていた。

ここ数年、私は山口県から岸根(がんね)栗を取り寄せている。特徴は何といってもその大きさで、1個40gほど。丹波栗と比べても一回り以上大きい。大きいが、大味ではなくしっとり。この実肉に洋酒が染み込んで、じゅわーっと染み出てくる感じがたまらない。作り方では入手しやすさでブランデーを使ったがはちみつのお酒、ミードでつくるのが、マイブーム。

師匠である母に送ったら
「ひとには食べさせられないね」
と久しぶりに聞く言葉。
「それって、他人には食べさせられないってこと?」と尋ねたら、
「ちがうわよ、この手間ひまがわからない人には食べさせられないってことよ」と。

なんと、30年以上たってはじめてわかった。その意味も、気持ちも。もしかしたら、手間がかかりすぎて、ほとほといやだったのかもしれない。それでも、できあがりのおいしさと、自家製による満足感と、私の喜ぶ顔を思い浮かべて作ってくれていたのかな。

そうだ、あのとき、母は50歳くらいだったのか。私が大学に入って上京したから、たまにしか会えなくなって、大人同士として東京で美味しいものを食べたりし始めた頃。
こんどは私がその年になって、ああ母はこんなときどう思ったんだろう? と、一番近くに居た、50歳の女性として、当時の母をたびたび思い出すようになった。

山脇りこさんの栗の渋皮煮の思い出のイラスト

いやはや大変だよね、鬼皮をむくのがいちばん面倒だよ、と思いながら、今年も母に渋皮煮を送ろうと思う。
なにしろ、「ひとにはたべさせられないし」ね。


山脇りこ著いとしの自家製レシピの本

山脇りこ
「いとしの自家製 手がおいしくするもの。」(ぴあ)
梅干し、ぬか漬け、白菜漬け、明太子、パテ・ド・カンパーニュ、白あん、粒あん……。一度は挑戦してみたい自家製からマヨネーズのような日常の自家製まで、安全でおいしい手作りレシピを100品掲載。


from c.c.cafe

どうして「自家製 ときどき旅レシピ」?

おいしかった料理を「どうやるんだろう? 自分で作ってみたい」と思うのは、どんな人にもある経験ではないでしょうか。旅の好きなりこさんは、旅先で出会った料理の記憶をいかして、りこ流に再現してみるそうです。それは日々の料理でも同じ。特に保存食は市販品で済ましてしまうのではなく、自分で素材を選んで作っ てみることで、新しい発見があります。この連載は『いとしの「自家製」 手がおいしくするもの』(ぴあ刊)のレシピを中心に、海外やりこさんの故郷の長崎をはじめとした国内の旅の風景を綴るエッセイとともにお届けします。


山脇りこさん

やまわき りこ

料理家。料理教室「リコズキッチン」主宰。旬の食材と丁寧にとっただし、伝統的な製法の調味料で作る、シンプルでセンスのよい料理が得意。自家製の味噌や梅干し、調味料作りはすでに生活の一部で、レッスンでも積極的に教えている。NHK『あさイチ』ほかTV 出演多数。


山脇りこさんの写真