Lifestyle

「東京最高のレストラン」
リアルタイム編集日記<第2回>

取材・文 山本久美  撮影 冨貴塚悠太

こんにちは。
レストランガイド「東京最高のレストラン」編集長・大木淳夫です。
前回(第1回)は今年で19年目を迎えるこのレストランガイドがどんなふうにユニークであるかを紹介しました。この回からは、このレストランガイドの批評部分を支えてくれている採点者の皆さんを、お一人ずつ紹介していきます。なぜなら、採点者はそれぞれの好み、個性を持っています。あなたに似た好み、似た感性の採点者をチェックすれば、、あなたの好みのレストランが見つかる確率が高いからです。

今回登場するのは渋谷生まれ、渋谷育ち、洗練された執筆スタイ ルで、グルメ評にとどまらず「食」に携わる人々への好奇心を描くフリーライター、浅妻千映子さん。女性誌やグルメガイドで活躍、ワインエキスパートの資格を持ち、クッキングクラスの講師も務める食べ手の横顔を紹介します。

浅妻千映子 プロフィール

東京生まれ。聖心女子大卒、大手建設会社で3年間のOL生活を経てフリーライターに。著書に『東京アロマフレスカの厨房から』『江戸前「握り」』(共に光文社)ほか、パティシエをテーマにした漫画『キングスウヰーツ』(全5巻・小学館)の原案を担当。『dancyu』などをはじめ、各雑誌でも活躍。作るのも好きで、『ほめられレシピ』(主婦と生活社)、『浅妻千映子キッチン』(ぴあ)のレシピ本も上梓。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。アカデミー・デュ・バン クッキングクラス講師。

渋谷のパスタやアイスクリームの店を制覇した10代
食にかかわる人々の真剣さを愛する

ー浅妻さんがレストランの世界に入ったきっかけを教えてください。

子供の頃から食べたり、料理したりするのが大好きでした。10代半ばの頃は、渋谷にあるパスタやアイスクリーム店を隅から隅まで食べ歩いたり、雑誌のレストラン特集を熟読したり。それと同時に文章を書くのも幼い頃から大好きで、都の作文コンクールで優勝したことも。それが合わさって今がある、という感じでしょうか。

ー食にまつわるフリーライターという仕事の魅力を教えてください。

私は3 年間のOL 生活以降ずっとフリーで仕事をしていますが、生産者もシェフも編集者も含めて“食” に真剣に関わる人はどの方も魅力的なんです。悪い人に会ったことはないですね(笑)。それがこの仕事を続けている大きな理由のひとつです。


まずシンプルで清潔であること
最初の一品に注目すると、
好みの店かどうかわかる

ーレストランに訪れた際にまずどこを見ますか?

意識しているわけではないのですが、店に入って嫌な匂いがすると気になってしまいます。例えば入った瞬間、店内がカビ臭かったり、おしぼりに過剰に香りをつけていたり。あとはグラスや水に嫌な匂いがすると一気に気持ちが下がってしまいます。逆にそれらが気にならなければ、自分にとって心地よいお店と言えると思います。

ー料理はどこに注目しているのでしょうか。

フレンチではアミューズ、寿司屋や和食店では突き出しなど、最初の一品がとても気になりますね。この一品目が好みだとその後の料理に期待が高まり、結果的に好きな店となる確率が高くなります。メインではなく、一品目にもぜひ注目してみてください。


フレンチから天ぷら、寿司まで
ワクワクさせてくれるレストランが好き

ー好きなレストランのジャンルや得意なジャンルは?

天ぷら、寿司、フレンチ、イタリアンでしょうか。今どきのレストランはどこも美味しいので、味プラス楽しくなるお店が好きです。なのでサービスも重要視していますね。あとワインリストも。簡単に手に入るワインばかりのリストだとガッカリしてしまいます。いずれにせよ、どのジャンルも味を含めて、次の料理が待ち遠しくなるようなレストランが好きですね。

ー「東京最高のレストラン2019年度版」に掲載されている浅妻さん推し3 店を教えてください。

  フレンチ  
ルコック

潔い飾り気のなさが
魅力の小さな店


何を頼んでもとても潔く、驚くほど飾り気のない料理が出てきます。燻製をかけただけのサーモンや焼いただけの鳥、アスパラガスのスープなど。超高級店が使っているほど極上の素材を使っているのかはわかりませんが、しかし間違いなく極上のひと皿に仕上がっているのです。その味わいはまったくストレスがなく、まるで体になじんでくるよう。ご夫婦2 人だけで営む小さな店で、すべてに派手さはないし、盛り上げてくれるようなサービスもないけれど、大切な人とゆっくり食事を楽しみたいときにおすすめです。

ルコック
東京都渋谷区恵比寿西2-7-2 ウィンズビル 1F

  イタリアン  
アロマフレスカ銀座
洗練された多皿コースの構成に脱帽

1998年に広尾でオープンしたアロマフレスカも20 周年を迎えました。2010年に移転した銀座の店はとてもエレガントで現代的。特別な日が似合うイタリアンだと思います。コースは2 種類あって、ひとつは広尾時代の名品をちりばめたコース。もうひとつは季節の素材を使ったコースで、いずれにしても原田シェフらしい軽やかさ、爽やかさが感じられます。心底すごいと思うのはコースの流れが完璧に計算されているということ。途中でお腹が膨れたりすることがなく非常に心地よく、最後のひと皿で満腹に。多皿コース構成がここまで練られた店はほかにないと思います。

アロマフレスカ銀座
東京都中央区銀座2-6-5 GINZA TRECIOUS 12F

  鮨  
銀座 鮨 み富
つまみではなく握りで勝負!
温故知新の店


こちらは名店・新富寿しに長くいらした方の独立店。昼から通し営業をしていて、おまかせのみではなくお好みで1貫から注文可能です。つまみはほとんどなく、本領発揮はやはり握り。空気を含んだ酢飯がつけ台でふわっと沈む。ハマグリやアナゴの煮たのはしっかり甘く、さらにこの手の味にはワサビも入れない。かんぴょうもこっくり甘く、〆るものはしっかり〆る。全体的に甘い印象が昔っぽく、それが今では逆に新鮮に感じると思います。最近の寿司屋によくある“しょっぱい味” に少々疲れ気味という人には一押しのお店です。銀座とはいえ気取ったところはまったくなく、安心して訪れられるのもポイントです。

銀座 鮨 み富
東京都中央区銀座5-10-11 川島ビル 2F

―2020 年12 月発売予定で現在編集作業中の「東京最高のレストラン2021 年度版」刊行が待ち遠しい読者のために、今年上半期でよかったお店を教えてください。


 イタリアン 
ダイタリア
(新代田)
「塩が強め」が
やみつきになる
「ご近所イタリアン」


地元の人に愛されそうな、気軽なイタリアン。こういう店はたいてい駅から離れているものだけれど、こちらは最寄り駅の井の頭線新代田駅から徒歩1分。渋谷にいたならほぼ10分で到着できちゃいます。盛りのいい前菜や、骨太パスタなど、計算された荒っぽさがかっこいい。塩は強めだが重くはなく、一度行くと必ず通いたくなること間違いなし。店のロゴにも注目を!

ダイタリア
東京都世田谷区羽根木1-4-18

 イタリアン 
コジコメ
(三軒茶屋)
立地も魅力の一つに?
シェフの「気分」を味わう


洗練の味が気軽に食べられるレストランです。定番メニューはなく、シェフの“今日の気分”で作った料理が、日めくりにしたノートに手書きされています。ジメッとした日に食べたイカのグリルと加賀太キュウリ、ハーブの一皿は、それはもう最高でした。作り手と食べ手の“今日の気分”が一致したのでしょう。ただ、到着しただけで達成感のある不便な場所という点だけは先に覚悟を決めて訪れてください。

コジコメ
東京都世田谷区下馬2-14-18

  バー  
SG クラブ
(渋谷)
ランチにはカレーも!
カフェ気分の魅惑のバー


「ラム アンド コーラ ウィザウト コーラ」「リースリングのようなマルガリータ」なんてユニークなメニューの並ぶバーがこちら。光の入る昼から営業し、カフェ気分でカクテルが飲めます。そしてランチタイムのみの、麻婆風味とメキシコ料理から発想を得たという2 種類のカレーは、2 種盛り必須の美味しさ。夜はパブのような雰囲気で賑わいますが、地下にはもう一つの顔もあるので、それはまたのお楽しみに。

SG クラブ
東京都渋谷区神南1-7-8



「東京最高のレストラン2019」(ぴあ刊)
創刊から19年。毎年発行されるレストランガイドの中で、最も歴史がある本です。プロの評論家が実名でレストランを採点し、語るスタイルは健在。さらに昨年から新メンバーとして松浦達也氏が加わりました。巻頭を飾る話題の注目店に選ばれたのは、はたしてどのレストランか?ニューオープン情報もますます充実です、巻末座談会「レストランの未来はどうなるのか」も必読です。