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ハンサムなパスタ。ゆず胡椒のカルボナーラ|山脇りこさんの「自家製」ときどき旅レシピ③

料理家山脇りこさんによる
記憶の中のあの味
記憶の中のあの旅
手づくり& 自家製を大切にする
りこ流レシピです。

レシピ作成・エッセイ/山脇りこ
構成/上坂美穂 イラスト/添田あき


R e c i p e P o i n t
カルボナーラというと、こってり重いイメージですが、ゆず胡椒のさわやかな香りで、すっきりとした仕上がりに。

2人分
スパゲッティ160g
ベーコン(サラミでも)100g
卵黄2個
バター2かけ(20g ほど)
ゆず胡椒※小さじ1
※好みで調整して。ゆず胡椒によって塩気、辛さ、違います。

作り方
1.
ベーコンは、2、3ミリ幅の細切りにする。

2.
鍋にたっぷりの湯をわかし、スパゲッティをゆでる。表示のゆで時間より、2 分前に1を入れ、1 分前に火を止めて、湯を切る。

3.
ボウルに卵黄、ゆず胡椒を入れて混ぜ合わせ、バターを入れる。2を熱いうちに加えて、全体をよくまぜる。

※こってりとさせたい時は、ベーコンを湯通しせずに炒めて加えるとよい。またチーズをふっても。


ゆず胡椒の胡椒は、ペッパーではなく、青唐辛子=青ごしょうのこと。長崎の実家では毎年、10月の初旬に1年分を仕込んでいた。材料は塩と、まだ青い唐辛子、まだ青いゆず。多くの地域ではこの両者は、晩秋になり赤や黄色に色づいてから価値が増すものではなかろうか?
 まだ青いふたりが、青いうちとしては最大のサイズで出会うラストチャンスが10月の頭。長崎の市場にはこの時期、青と青がたくさん並ぶ。おりしもいちばんにぎやかな秋の大祭『おくんち』のころ。私にはゆず胡椒=おくんちとインプットされている。

まず、青ゆずの皮を薄くむく。青唐辛子はヘタを取り、辛さ調節のため種も半分くらいとる。あら塩と合わせ、すり鉢で丁寧にあたって細かくする(そう当時はすり鉢で! いまは“フープロ”です)。おくんちでピーヒャラと練り歩くしゃぎり(お囃子)の音をBGMに、浮足立つのをぐっとこらえて淡々と手を動かす。危険なほどの辛い空気で涙が出る。ゆ ず皮も手に染みてくる。その手は、どこにも接触禁止。私も近づかないようにと怒られた。できあがりは鮮やかな目が痛くなる青=若い緑。

しかし、不思議。この危険物質は1か月もすると、辛さが馴染んでやわらぎ、青ゆずの香りが立ち、しっとりとした唯一無二の調味料に変身する。
11月ごろ、今年モノのゆず胡椒が食卓に並びはじめる。以来、四季を通して使う。甘めの麦みその味噌汁に、つんと添える。卵かけごはんにしのばせる。白身のキリっとした刺身にくるっと巻く。煮物の仕上げに。味噌と合わせて、おにぎりに。梅と合わせて和え物に。

世の中には、ゆず胡椒を、いわゆる辛みだと思っている人がいるけど、それは誤解だ。柚子胡椒は鮮烈な香りを楽しむためのもの。青と青が出会う一瞬をぎゅっと閉じ込めたもの。出し入れは常に冷凍庫から。香りが抜けたら、死んだも同然と心得よ。

結婚した年の秋、相方に手伝いを命じていっしょに作業した。ゆずをむく、青唐辛子の種を取る、で根をあげた。以来、手伝ってはもらわないけど、やけにありがたがって食べている。しめしめ。


撮影/長谷川潤

ゆず胡椒の材料となる青ゆず、青唐辛子は地方によって出回る時期が少しずつ違いますが、初秋から中秋にかけてが自家製のシーズン。加えるのは塩だけ。フードプロセッサーを使うと手軽にできます。

材料(作りやすい分量)
青ゆず※25個
青唐辛子200g
好みの自然塩50g
※青ゆずは、できれば無農薬・減農薬のもので。大きめのものな ら20 個ほどでもOK。


作り方
1.
青ゆずは皮をむく。白い部分が入らないようにごく薄くむく。


2.
青唐辛子は枝からはずしてへたをとる。2/3量は切り目を入れ、浄水で洗いながら中の種をとり除く。


3. 
1、2、塩をフードプロセッサーにかける。


4. 
保存瓶は熱湯で洗ってよくふき、3を入れる。

※手や目にしみるので、ビニール手袋をしたり、目を触らないなどの注意を。
◎冷凍保存し、1 ヶ月後くらいからが食べごろ。冷凍庫で2年ほど保存可能(常に冷凍保存。清潔なスプーンで使う分だけ取り出し、再び冷凍庫へ)。


使い方のヒント

甘いバニラアイスクリームにゆずごしょうを少し。青ゆずの香りが広がる爽やかなデザートがあっという間にでき上がり。



山脇りこ
「いとしの自家製 手がおいしくするもの。」(ぴあ)
梅干し、ぬか漬け、白菜漬け、明太子、パテ・ド・カンパーニュ、白あん、粒あん……。一度は挑戦してみたい自家製からマヨネーズのような日常の自家製まで、安全でおいしい手作りレシピを100品掲載。

from c.c.cafe

どうして「自家製 ときどき旅レシピ」?

おいしかった料理を「どうやるんだろう? 自分で作ってみたい」と思うのは、どんな人にもある経験ではないでしょうか。旅の好きなりこさんは、旅先で出会った料理の記憶をいかして、りこ流に再現してみるそうです。それは日々の料理でも同じ。特に保存食は市販品で済ましてしまうのではなく、自分で素材を選んで作っ てみることで、新しい発見があります。この連載は『いとしの「自家製」 手がおいしくするもの』(ぴあ刊)のレシピを中心に、海外やりこさんの故郷の長崎をはじめとした国内の旅の風景を綴るエッセイとともにお届けします。


山脇りこさん

やまわき りこ

料理家。料理教室「リコズキッチン」主宰。旬の食材と丁寧にとっただし、伝統的な製法の調味料で作る、シンプルでセンスのよい料理が得意。自家製の味噌や梅干し、調味料作りはすでに生活の一部で、レッスンでも積極的に教えている。NHK『あさイチ』ほかTV 出演多数。