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スポーツジャーナリスト生島淳さんの
取材後記 アスリートのメンテ力〈第2回〉

スポーツの最前線を取材する
生島さんならではの
視点がここに
取材・文/生島淳  撮影/富貴塚 悠太


パラトライアスロンは
スイム、バイク、ランの
耐久性以上に
“トランジッション”が大切!
〈第2回〉

大切な水分補給。走りながら飲めるタイプのものを愛用。

 選手たちに話を聞く醍醐味というのは、見ているだけではまったく想像もつかなかった競技の難しさや面白さを、選手から直接教えてもらえることにあります。
 これまでトライアスロンというのは、「鉄人レース」というキャッチフレーズが示すように、スイム、バイク、ランの3種目を耐え抜く持久力が勝敗を決めるものだと思い込んでいました。

 ところが、違ったのです。
 土田選手は、「種目と種目のつなぎ、これを“トランジッション”というんですが、体の回路の切り替えが大切なんです」とトライアスロンのポイントを教えてくれました。
 ひょっとしたら、オリンピックに出場した選手からまったく同じ話を聞いたとしても、それほど感じるところがなかったかもしれません。
 しかし、ハンディキャップを持つ土田選手から聞くと、体の機能に限られた部分があるため、種目と種目のつなぎ目がものすごく大切だということが、より伝わってくるのです。
 これは動きだけでなく、神経回路の切り替えも意味します。
 おそらく、20代の選手の方が回路の切り替えが早いのではないか、と想像します。

耐久性以上に「トランジッション」が大切な競技。

 1980年代から競技生活を始めた土田選手は、パラスポーツという点ではベテランですが、トライアスロンについてはまだルーキー。神経回路のつなぎ方には、時間がかかるのかもしれません。
 それでも、年齢を重ねた強みも土田選手からは感じるのです。
「体の回復にも、それは時間が必要になってますよ」と笑顔を見せる土田選手ですが、もう20年以上も競技生活を続けてきたことで、自分の体をより深く知っていることに疑いはありません。
 しかも、いつまでも昔の強さに憧れを持つのではなく、その年齢なりのしなやかさを持つことを大切にする。

 パラアスリートからは、人生のヒントをたくさんもらえる気がします。

from c.c.cafe

どうして生島さん?

この連載はスポーツジャーナリストの生島淳さんにお願いしています。スポーツ関連のTV番組や雑誌で活躍する人気ジャーナリストだけに、スポーツファンならご存知の方も多いはず。
そんな生島さんですら、スポーツそのものに焦点を当てない取材は、あまりないとのこと。
記事の中には、生島さんならではの過去の取材経験談も登場するようなので、その点もお楽しみに。

生島 淳さん

いくしま じゅん

1967年宮城県生まれ、早大卒。五輪は1996年のアトランタ大会から取材。著書に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」、「エディー・ジョーンズとの対話」など。