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我が子を一流アスリートに育てるには?
アジア大会優勝編(前半)

フェンシング松山恭助選手の母、
松山幸子さんが、
アスリートの親世代に送るメッセージ。

取材・文/上坂美穂

勝てない試合が続いた後の念願の金メダル
その我慢の期間、母は子どもをどう見守っていたか

6月13日から18日まで、千葉を会場に行われていたアジアフェンシングアジア大会。息子の松山恭助がキャプテンを務める男子団体フルーレが優勝。アジア大会では10年ぶりとなる金メダルを獲得しました。この1年は、オリンピックへの出場をかけてそれぞれの試合にポイントが付きます。ホームで行われる2020年東京オリンピック出場への道のりの中で、本当に負けられない試合だったので、その安ど感は言い尽くせないものでした。

団体戦の応援で会場にスタンバイしていて、私は息子の試合の前に生まれて初めて「緊張で吐く」ということを経験しました。今まで「吐きそう」と思うことはあっても実際にそうなったことはありません。自分の子どもの試合だからというレベルをはるかに超えた緊張は、もはや個人の問題ではなく、日本のフェンシング界の期待を背負い、オリンピック出場がかかるレースを責任重大なキャプテンという立場で受け止めている息子の重圧を、わがことのように感じてしまっていたからです。


「負けられない試合」と言いましたが、前日の個人戦では恭助は負けてしまっていたので、本当に後がなかった。よく気持ちを切り替えて頑張ったと思います。どちらかというと闘志は内にたぎらせ、クールなフェンシングをするタイプの選手なのですが、団体戦ではいままで聞いたことのないような雄たけびを上げ、声を出して自分を奮い立たせていた。その熱量は周囲にも伝わっていました。

準決勝では世界ランキングは日本より上位の香港を激戦の末下し、臨んだ中国との決勝。終盤までハラハラしましたが、選手たちそれぞれの持ち場を活かした試合が展開し、恭助が最後の選手として45対43で勝ち切り、日本が優勝したのです。

「自分たちは史上最強のチームだ。史上最強のポイントゲッターの敷根崇裕、史上最強の攻撃力を誇る鈴村健太、そして史上最強の結束力を作った松山恭助に感謝し、世界を目指したいと思います」。今回の試合の後、ともに戦ったチームメイトでありロンドンオリンピック男子団体の銀メダリスト三宅涼選手の言葉に、恭助がキャプテンとしての役目をきちんと果たしたのだと心からほっとしました。